昨年のいまごろ、home's vi の”さよぽん”(山本彩代さん)からお誘いが。
「コーゾーさん、『7日間ブックカバーチャレンジ』やりません?」…ほうほう。
なんでも、
・毎日1冊ずつ、おすすめ本の表紙をfacebookに投稿
・選書の理由は、添えても、添えなくても(添えても、短いコトバで)
・毎回(=投稿のたびに7日間)「次はよろしくね!」と、誰かにバトンを渡す
…ということらしい。
(そのとき、”さよぽん”が推してた本はこちら)
なるほど、コロナウィルスで世間が騒いでいるこの時期、むしろ俗塵と喧噪を離れて、考えを整理するのは良いですね。
私は「毎日、誰かにバトンを渡す」というルールは採用せず(※)、代わりに「7日間の投稿がすべて終了したら、1名だけ指名する」という形で、参加することにしました。
※だってこれ、参加者をネズミ講式に増やすための手段であって、「バトンを渡す」とは言わないでしょう?
今回の選書テーマは
「10年前(2010年、35歳)の自分に手渡したい7冊」です。
未来に明るい兆しをまったく見出せず、五里霧中の状態だった10年前。
そんな自分に「こういうのを読んどくと、軽佻浮薄な言説に振り回されず、しっかり歩いていけまっせ」と伝えたい。
それでは、元気よく行ってみよう!
(それぞれのコメントは、今回書き足したものです。けっこう長いのでご注意ください。)
1)小林秀雄、岡潔『人間の建設』(新潮社)
「今を去る四十年前のデンマークはもっとも憐れなる国でありました。1864年にドイツ、オーストリアの二強国の圧迫するところとなり、その要求を拒みし結果、ついに開戦の不幸を見、デンマーク人は善く戦いましたが、しかし弱はもって強に勝つ能はず、デッペルの一戦に北軍敗れてふたたび起つ能わざるにいたりました。」
「われらは外に失いしところのものを、内において取り返すを得 べし、君らと余との生存中にわれらはユトランドの曠野(あれの)を化して、薔薇 の花咲くところとなすを得べし。」
「私が考えてみますに人間が後世に遺すことのできる、ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば、勇ましい高尚なる生涯であると思います。」
さて3日目。当初はまったく別の本を紹介する予定でした。
ところが、前日に『デンマルク国の話』を読み返したところ、「現代の日本にも、”ダルガス”に比肩する勇気と実践の人物が、居るのでは?」という想いにかられました。
そして、書棚から引っ張り出してきたのがこちら。たしか、テレビ局でビジネス番組を作っていた頃に、資料として(自費で)購入したもの。
徳島県の山間部で「葉っぱビジネス」という新しい産業を興した横石さん。酪農から林業への大転換を果たしたダルガスの姿が、かぶって見えます。
著者の横石知二(よこいし・ともじ)氏
(株式会社いろどり Webページより)
1981年、当時は農協の若手職員(営農指導員2年め、22歳)だった横石さん。その年の冬、上勝町(かみかつちょう)は猛烈な寒波に見舞われ、基幹産業だったミカン栽培がほぼ全滅という大打撃を受けます。
「なにか、ミカンに代わる主力商品を育てなければ…。」
その後の数年間、さまざまな試行錯誤を経て、椎茸、ワケギといった作物への転換を進めていきました。けれど、まだ「これ」といった決め手にはならない。
そんなあるとき(1986年)、出張先での横石さんの「ひらめき」が、上勝町に奇跡をもたらします。少々長くなりますが、本文から引用しましょう。
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シイタケの栽培を始めて、農家の仕事は一年中回るようになった。
そのため私は、
このことを四六時中、頭の中で考えるようになった。
(中略)
昭和61年(1986年)
私たちがあれこれしゃべりながら一杯やっていると、
(女子大生……かな)
「こっちも3人、向こうも3人、ちょっと声かけてみよか」
お酒も入って陽気な村田さんに、
すると、その中の一人の子が、
「これ、かわいー、きれいねー」
「水に浮かべてみても、いいわねー」
別の子は、その葉っぱをグラスに浮かべて喜んで見ている。
「持って帰ろう」
最初の女の子はバッグからピンク色の、
(これが、かわいい?)
私には不思議に思えた。
(こんな葉っぱが?)
モミジの葉っぱなんて珍しくもなんともない。
そう思った次の瞬間、ピッ!とひらめいた。
そうだ、葉っぱだ! 葉っぱがあった!
葉っぱを売ろう!
葉っぱなら軽いから、女の人やお年寄りでも扱いやすいし、何より上勝の山にいくらでもある。
ものすごいひらめきに電撃に打たれたように体が硬直し、次に興奮で胸がドキドキした。「これはいける」
早速、店の人に尋ねてみた。
「こ、この葉っぱは、どこから仕入れよるんですか」
「葉っぱ? ああ、こういうつまものは、料理人が山へ行って、
「ツマモノ……ですか」
私は「つまもの(妻物)」という言葉を、28歳のそのとき初めて知った。
村田さんにも尋ねてみると、
「これはいけるぞー」
この大発見に興奮し、
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うんうん、横石さんの「ひらめきの瞬間」の興奮が、伝わってくるようですね。
もちろんこうした「ひらめき」は、あくまでもスタート地点。その後の紆余曲折は、本当に大変なものと相場が決まっておりまして…(というのは、私も経験ずみ)。
とにもかくにも、「どこにでもあるような田舎の、1人の青年が巻き起こした物語」は、シンプルに勇気を与えてくれます。特に中高生くらいのお子さんをお持ちのご家庭に、おすすめしたい1冊です。
…以上、「10年前の自分に読ませたかった7冊」、3冊目までをご紹介しました。
中編へつづきます。→【こちら】
(全3回を予定)
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