Amazon等ではしばらく「品切れ中」となっていたため(※)、これ幸いと迷わず購入。
もうじき郷里へ帰る予定だという20代の若者に、プレゼントしようと思っています。これまでも色々な人の「門出」にあたって、手渡してきた本です。
この本に登場するのは、
稲本裕(オーク・ヴィレッジ塗師 22歳)
村崎太郎(猿まわし調教師 22歳)
宮崎学(動物カメラマン 34歳)
田崎真也(ソムリエ 25歳)
吉野金次(レコーディング・ミキサー 36歳)
…といった方々(肩書と年齢は、1984年の執筆当時のもの)。
今や、その道の大御所となった方もいらっしゃいますが(たとえばソムリエの田崎真也さん)、いずれも「よい大学、よい就職先」といった世間の固定観念から離れ、徒手空拳で自分の道を切り拓いてきた方々。
しかも(少なくとも、日本においては)誰も歩いたことのない道・新しい職業ジャンルを確立された方がほとんどです。
この本と最初に出会ったのは、確か大学3回生の終わりごろ。
私がそもそも大学に、なかでも法学部に進学したのは
「ゆくゆくは厚生省(現・厚生労働省)の役人になって、医療保険の制度改革を担うぞ!」
という志(のようなもの)を持っていたからなのですが、いろいろあって、3回生の秋ごろにはその情熱もすっかり冷めていました。
かといって、次の目標もすぐには見つからない。
そんな頃、近所(※)に住んでいた同級生のK君(現・NHKニュース記者)が
「コーゾー、将来について真剣に悩んでいるんだったら、読んでみたらどうだい?」と、勧めてくれたのがこの本…と記憶しているんだけど、どうだったっけな。
※近所、というのがどのくらい近所だったかというと、同じアパートの同じフロア、3軒隣でした。下鴨神社のすぐ近く。
この本は、とにかく「まえがき」と「あとがき」が素晴らしいので、皆さんももし書店で見かけたら、ぜひ読んでみてください。
「あとがき」には、こう記されています。
この連載に登場した若者たち一人一人、それぞれに「船出」の時があった。これというあては何もないのに、自分だけを頼りに、自分の人生を賭けた航海に、未知の大海へ向けて漕ぎだしていく「船出」の時があった。※空海の「謎の空白時代」… 弘法大師空海(元の名は佐伯真魚[さえきの・まお])が、当時のエリート養成機関を19歳でドロップアウトし、どこかの山中で修行を重ねていた10数年間のこと。
注意してもらいたいのは、その「船出」の前の時期である。空海の「謎の空白時代(※)」にあたる時期である。この連載では、それを「謎の空白」で終わらせずに、できるだけ本人をして、そのとき何を考えなにをしていたのかを語らしめている。(p.277)
思えば私も5年前、これというあてのない航海に出ました。
いや、あれは「航海」なんて呼べるものじゃないな。まぎれもなく「漂流」でした。
しかし今は、、、
あれ、今になって気づいたのですが、いつの頃からか、明確な意図を持つ「航海」に切り替わっていました。
羅針盤も海図も手にしましたし、古臭い航海術の教科書と、最新のものとを見分ける眼力(がんりき)も、今の私には備わっているようです。
この「自信を持って舵(かじ)をとっている感覚」、いつからだっけ?
「次の停泊地まで、ずいぶんと距離があるなぁ、疲れるなぁ、、、」といった思いはありますが、いつからか「漂流」が「航海」に変わったこと、これは間違いないようです。
そういえば本書の「まえがき」にも、こんなふうに書いてありました。
それが青春であるかどうかなど考えるゆとりもなく、精一杯生きることに熱中しているうちに、青春は過ぎ去ってしまうものである。ぼくの場合もそうだった。ある日突然、ああ、オレの青春は終わったなと自覚した。(中略)それは自分の生き方に対する迷いからふっきれたことを自覚した時だったように思う。
著者の立花隆さんも、若くして超・有名企業(文藝春秋社)を離れ、徒手空拳の「青春漂流」を経験された方。だからこそこの書籍は、単なるインタビューの集積ではなく、長く読み継がれるだけの「魂」を備えているのでしょう。
そんなわけで、「いつか航海に出るために、しっかり漂流しておきましょう」というのが、もう不惑を超えてしまった40代のおじさんから、若い人たちへのメッセージです。
(よかった、話にオチがついて…)
この本をあげる予定のW君(確か28歳)にも、そんな言葉を添えて渡そうと思います。
この本をあげる予定のW君(確か28歳)にも、そんな言葉を添えて渡そうと思います。
こういうメッセージを実感を込めて語れる大人は、そんなに多くないみたいですからね。
「泳ぐ力があるうちに、漂流しよう、そうしよう!」
それでは、終わりに1曲。
奥田民生さんの『さすらい』を、広島市民球場のライブ版でどうぞ。
(奥田民生 You Tube公式チャンネルより)
(コーゾー)
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